◆対人恐怖症(社交不安障害)◆ 対人恐怖症は、わが国に特徴的な神経症であり、しかも青年期にその大部分が発症するということが知られている。 その心性は、他者と居合わせる場面で、不当に強い不安と精神的緊張が生じ、 そのために他人に軽蔑されるのではないか、他人に不快な感じを与えるのではないかと案じ、 対人関係からできるだけ身を退こうとする神経症の一型である。 ある研究では、その重篤さの程度によって、対人恐怖症を4つに分類し、 その第1段階として、「平均者の青春期という発達段階において一時的にみられるもの」とした。 このように、我が国の青年においては、対人恐怖症の発症に直接結びつかないまでも、潜在的に対人恐怖心性を有する者が多いと考えられる。 対人恐怖の心性を見るとき、対人恐怖は、単純に他人が嫌いなわけではないことが読み取ることが出来る。 つまり、「ひと」恐怖でないどころか、「ひとに対する己」恐怖なのである。 対人恐怖症とは、いわば、対人関係の在り方が端的に症状の中核となっている神経症であり、 症者は対人的状況において他者との関係に悩む、「関係の病理」ともいえる。 対人恐怖心性とその精神病理の特徴は、以下の6点である。 1)発症は通常、思春期・青年期である(問題の思春期・青年期性) 2)症者は、周囲に対する違和感を感じており、自分は他の人とは異なり、 相手に不快感を与える精神的・身体的欠点があると確信している(自己の異質性、劣等性への確信) 3)その反面、症者は自己を主張したいという強い気持ちや高い自尊心を有している(自己顕示、自己優越への欲求) 4)自らの精神的・身体的欠点は相手の所作や行動からも直感的に感じとられる(関係念慮・妄想性) 5)このような妄想的体験や症状は一定の対人状況内で発現する(妄想的体験及び症状発現の限局性) 6)生育暦や病前性格、発症時の状況要因などから症状の形成が了解しうる(症状形成の了解性) ◆治療◆ 対人恐怖症の核心的要素である「自分が他者に不快を与えている」という認知・思考を いかに客観的に修正していくか、ということになります。 そのために認知面からアプローチと、行動を行っていきます。 注意点は、行動がただ単に行動して終了にならないよう、それを 認知の変容に連鎖させていくことが重要です。 |